【祝!受賞】宮内悠介スペシャルインタビュー『遠い他国でひょんと死ぬるや』

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この度、宮内悠介『遠い他国でひょんと死ぬるや』が、令和元年度(第70回)芸術選奨 文部科学大臣新人賞を受賞いたしました。
受賞を記念し、この作品への想いを語っていただきました。
『遠い他国でひょんと死ぬるや』を既にお読みの方も、これから読まれる方も是非ご一読ください!


――受賞にあたってのお気持ちは?
宮内:なんと、今回は南極へと旅する船のなかで担当さんより受賞の報を受けたのでした。担当さんとじっくり時間をかけて作った長編でしたので、それが報われたようで嬉しく思っています。

――宮内さんの作風はSF、ミステリを初め、とても幅広いものがありますが、その中での本作品の位置づけは?
宮内:主題に重たいものを抱えていますので、語りや装いの面では、軽い娯楽小説のように読めるものを目指しました。目標としたのは、映画監督のエミール・クストリッツァの諸作品です。たとえば、ユーゴ紛争を扱いながら、合間に、どうしようもなく笑えるギャグを挟んできたりする。でもそれが、なくてはならない何かだと感じさせられもするのです。

――詩人竹内浩三との出会いと、題材にした思いはどのようなものだったのでしょうか?
宮内:単純に竹内浩三の詩に打たれ、作中に取り入れたのでした。浩三は戦争を前にしてなお、素朴な青年の感性のようなものを保ちつづけた人物です。だから、戦争を知らないはずのいまを生きる私たちにも伝わるものがある。わかった気になってはならないのですが、わかる気がする。ここには危うさもありますが、ですがこれを私と過去をつなぐ一本の架け橋としました。

――本作品ではフィリピンへの取材旅行に出かけ、受賞をお聞きになったのも旅先でした。宮内さんにとって「旅」とは?
宮内:これは過去にも発言したのですが、私にとって旅とは視野を広げるためではなく、狭めるためのものであったりします。私たちは体験を通じてより頑固になっていく。それと同じです。すべてを相対化してしまわないための、私にとっての処方箋が旅なのでした。

――それぞれの登場人物との対峙が示される“歴史”は、作品の大きなテーマです。作者としての歴史への思いは?
宮内:たとえるなら、SNSにいる個々人やそのつぶやきを葉とすれば、歴史は根となる部位のはずです。ですが、この根を修正しようとする動きもある。かといって、学者でもない私たちが根に触れようとしても、よほど慎重にやらない限り、これもまたなんらかの修正を受けてしまう。そして、私たち葉の一枚一枚は不安を抱えたままになる。だからやはり、追い求めることになる。ジレンマとの闘いです。

――最終章ではそれまでのトーンが一変したものとなります。この形式を選んだ理由は?
宮内:賛否両論あるところだと思いますが、著者としては、今回は最終章がすべてです。それまでの章はすべて、この最終章のためにあるといっても過言ではありません。

――主人公須藤を厄年の元TVマンにした理由と思いはどのようなものでしょうか?
宮内:年齢は、単に著者の私と近かったものですから。マスメディアが抱えているだろう葛藤も、触れておきたかったものの一つです。

――作品からあふれるほどのモチーフやギミックで一番のお気に入りは?
宮内:一つ選ぶなら、ナイマというヒロインが持っている石でしょうか。私自身、鉱石が好きなものですから。

――『遠い他国でひょんと死ぬるや』をふまえたさらなる作品の構想はお持ちですか?
宮内:これまでも、ときおり紛争や戦争の類いに触れてきましたが、政治の季節は、本作をもってとりあえず一区切りと考えています。国際情勢であれなんであれ、物事の変化があまりにも速いので、いったん落ち着いて俯瞰した上で、いずれ第二の政治の季節に入ることになるのだと思います。
PHOTO/週刊読書人


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