本書は、本郷和人先生(東大史料編纂所教授)に「ひとつの戦いに絞るのではなく、日本史の転換点となった乱と変を10ほど抽出して、おのおの考察していただけませんか」との依頼から始まりました。それらを俯瞰することで、日本史の本質が見えてくるのではないか、と考えたからです。
頼朝を決意させた一言
具体的には、なぜ起こったのか(背景)、誰と誰が何のために戦ったか(構図)、どう進展したか(経過)、何をもたらしたのか(結果)を明らかにして、当時の時代がどのような状況であり、日本人は何を求めたのかについて言及していただきました。
ですから、戦闘の詳細に触れないこともあります。治承・寿永の乱(いわゆる源平の争乱)を扱った場合、一般的には、一の谷の戦いにおける鵯越えなど、源義経の軍事的天才がクローズアップされることが多いのですが、本書では義経がほとんど登場しません。本郷先生は「義経がいなくても、別の人物が出てきたかもしれないし、あれほど華々しい結果ではなく泥臭い形で決着がついたかもしれない。それでも、最終的には、やはり源氏が勝利したと考え」るからです。
それよりも、三浦義澄、千葉常胤、上総広常が源頼朝に放った言葉のほうが、はるかに重要と見なしています。なぜなら、その発言こそ頼朝に幕府を開かせ、武士の時代を到来させたからです。まさに歴史を変えたわけです。
応仁の乱の謎が解けた
いっぽう、教科書では、有力守護の力を削(そ)ぐために室町幕府が起こした事件のひとつとされる明徳の乱を、本書では大きく扱っています。それは、明徳の乱がわかれば、難解とされる応仁の乱を容易に理解することができるからです。私もそれまで消化不良で、モヤモヤしていましたが、今回はじめて胸に落ちました。
このようにして乱と変を読み解いていくと、勝者と敗者を分けたもの、つまり日本史における「勝者」の条件が見えてきました。それが、本書オビにもある「結局、この国では〇〇〇〇に乗った奴が勝つ!」です。この答えは、日本および日本人の本質に迫るものであり、21世紀に生きる私たちにも有効だと思います。
読みやすい文章とともに、日本史のおもしろさ・奥深さに触れていただければ幸いです。
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